「ひとり起業5年目。地域に支えられています」

原田 佳奈さん(32歳)

取材年月:2019年9月

東京の専門学校で菓子作りを学び、ケーキ屋、カフェ、パン屋で働いた後、 2015年に27歳で取手市内に焼き菓子カフェ「こなのか」をオープンさせた原田さん。 近隣の方を中心に、多くのお客様に愛されるお店を取手で始めた理由や、 起業する人にとっての取手の魅力など、お話を伺いました。

起業したいと思ったのは
いつ頃からですか?

昔から、お店を持ちたいというのは漠然とあったんですけど、本格的に持とうと思ったのは、20代後半になってからです。20代のうちに何かやりたいと思うようになりました。

取手でお店を始めたのはなぜですか?

取手生まれ、取手育ちなので、元々地元でお店を持ちたいというのがありました。でも専門学校を出て、20代になった頃くらいから、私が小さい時に比べて取手に元気がなくなってきてしまったように思ったこともあって、戻ってきてお店をやろうかどうか迷った時期もあったのですが・・・。

-そうなんですね。他の候補もあったんですか?-

家から通える範囲ということで、周辺都市も柏あたりまでいろいろと見てみました。でも、始めるなら、やっぱりよく知った地域で始めたいなと思いました。実家に住んでいた頃は、通勤でここの前もよく通っていたので、とても馴染みの場所だったというのもあります。

始めてみて、どうですか?

最初は不安でしたけど、始めて良かったという気持ちが日に日に大きくなっています。実は、お店を始めた頃、まわりの人たちからは、心配の声もいただいていました(笑)。でも、いざ始めてみると、自分の想像以上に、「どこから来たんだろう?」と思えるような、若いお客様もたくさん来てくださって。「今までは他の街に買いに行ってたけど、近くにできてとっても嬉しい」と言っていただくことがすごく多くて、こういうお店がなかっただけで、街に若い人がいなくなったわけではないんだ、ということがわかりました。

-お客様はどんな人がいらっしゃるんですか?-

大した宣伝もせず、急に始めたので、今でも“近くに住んでたけど今日が初めて”という方はいらっしゃるんですけど、基本的にはリピーターの方がほとんどです。小学校が近いので、参観日やPTA総会の後に立ち寄ってくださる若いお母さんたちや、給食調理員の方、おつかいに一人で来るお子さん、年配の男性でオープン当初から毎日欠かさず、一日に二回来てくださっている方もいます。5年近くやっていると、当時小学生だった子が高校生になっていたり、ホワイトデーに来てくれていた中学生が大学生になっていたり、みなさんの成長や変化が見られるのが感慨深いです。お子さんからは、たまに手紙をもらうこともあって、「将来お菓子屋さんになりたい」と言われるととても嬉しいです!また、地元の方だけでなく、焼き菓子という特性から、ギフトでもらったと、つくばや柏、松戸あたりから来てくださる方もいらっしゃいます。取手ならではの手土産が欲しいというニーズにもお応えできているようです。

オープンからずっとひとりで?今後については?

オープンからひとりでやってます。いろんなところで勤めてきましたが、自分で実現したいやり方があって。店舗を増やすとか、お店のやり方はいろいろあると思いますが、私は今後も自分の手の届く範囲でやっていくと思います。

実は、始めた時は、うまくいくかもわからなかったので、「3年やって辞めよう」と思っていたんです。もし再就職するなら、30代前半ならまだいけるかなと。でも、いざ始めてみたら、いろんな人に続けて欲しいと言っていただいて。「ここがあってよかった」と言われると、今後も続けていきたいなと思います。特に嬉しかったのが、入院されていた常連のお客様に、退院したらここに来ることを目標に頑張ったと言われたことです。隣のベッドの方もお店をご存知だったみたいで、お互いそれを励みにしていたと、退院後、松葉杖をついてご来店いただいて・・・本当にありがたいなと思いました。

昨年、結婚して、住まいが取手を離れたのをきっかけに、お店を続けるかどうかも検討したんです。
でも、よく考えた結果、やっぱり続けたいと思いました。住まいも取手に戻して、今後は旦那さんにも手伝ってもらいながら、マルシェに出店したり、移動販売で、ここまで買いに来られないお客様にも提供していければと考えています。ますます精力的に頑張っていこうと思っています!

これから取手で起業したい人にメッセージをお願いします

起業って怖いというイメージがあるみたいで 「お店をやるのって大変ですか?」と聞かれることが多いのですが、ちゃんと調べてやれば大丈夫です!取手は、他の地域に比べて、開業資金も控えめで済みますし、個人での起業がしやすい場所だと思います。やればお客様もちゃんといらっしゃる地域だし、「ワタシの街の起業支援Match(マッチ)」という創業、起業を支援する市のサービスもありますし。少しでも、やってみたいなと考えている方には、私を見て、「私もできそう」と思ってもらえたら嬉しいです。もっともっと、同世代をはじめ、いろんな起業仲間が増えて、交流できたらと思いますし、今は昔より少し余裕も出て来たので、これから始めたい人には、私でよければお話することもできます。

原田さんにとっての「ほどよく絶妙とりで」とは?

取手で生まれ育った私ですが、結婚で少し取手を離れて、改めて感じる取手の良さは、一番はやはり「東京がほどよく近い、便利さ」かなと思います。あと、チェーン店ばかりでなく、独自のお店が多くて面白みがあるのも魅力です。都会すぎると競合が多い、でも田舎すぎるとお客さんがいない。そこのバランスもほどよく絶妙で、「自分のやりたいことで、オンリーワンを目指す」にはとてもいい街なのかなと思います。

取手って、昔に比べるとさみしくなったね、と言われることも多いんですが、後を継ぐ人がいなければ、お店はどうしてもなくなっていってしまうので、それは仕方ないと思うんです。でもその分、新しい人達がこれからお店をオープンさせていくチャンスにはとても恵まれています。これから新しい循環がどんどん生まれて、街が活性化していくといいなと思っています!